手考足思
「手で考え足で思う」。大正から昭和にかけて京都を拠点に活躍した陶芸作家・河井寛次郎さんの
言葉だそうです。
鵤工舎を立ち上げた、小川三夫さんの「棟梁」という本を読んでいて出てきた言葉ですが、
大きな衝撃をうけました。
板をきれいに「へぐ」ためには、五感のすべてを研ぎ澄まさなければなりません。
手に伝わる感触、耳に聞こえる音、目に見える割り肌、そして足に感じる板の粘り。
仕事を始めてまだ17年ですが、
このごろようやく「その木にあったへぎ方」が分かり始めているような気がします。
我々の仕事は「木」という生き物を扱う仕事です。
木をモノとして見ることしかできなければ、手で感じるもの、足で感じるもの、そして
体で感じるすべての感覚を見失う事になりかねません。
頭で考えるのではなく、とにかく「触る」。そして体で感じる。
こういった積み重ねがきっと自分自身を大きく成長させてくれるのだと思います。
「手で考え足で思う」河井寛次郎さんが語った本当の意味は他にあるのかもしれません。
ただ、毎日木と向き合い、試行錯誤を繰り返しながら、肩肘を張っていた私の心の中に
自然と入ってきた言葉であることに間違いありません。
この手に、この足に、多くの事を学ばせ
これからも「木」と寄り添いながら、真摯に向き合おう。
そう思います。