絶滅危惧種?
12月17日、伝統的建造物を支える技「伝統建築工匠の技」がユネスコ無形文化遺産に登録された。
こういった伝統技術に光を当てて下さる事は、私たちにとって栄誉なことである。
あいにくコロナ関連のニュースに埋もれて、それほど注目されなかったことが唯一残念ではあるが、国内のみならず世界からも認められた「技」として、今後さらなる精進が必要になってくる。
さて今回登録された技術は国の「選定保存技術」に認定されているものである。
これは文化財をはじめとする伝統的建造物を後世に伝えていくために欠かすことのできない技であり、保存の措置を講ずる必要のあるもの。と定義されている。
言ってみれば、国の助けがなければ「なくなってしまう」かもしれない技術であり、「技の絶滅危惧種」と言ってもよいだろうか?こんな事を書くと、誰かに怒られそうな気もするが、私は常々そう思っている。
国土の7割近くが森林に覆われ、豊かな資源に恵まれたこの国は、その恩恵を受けながら独自の技を磨いてきた。
檜皮葺や杮葺(板葺)、茅葺などの植物性資材を用いた屋根工法は、現在では重要文化財に代表される建物に施され、一般の住宅からは、ほぼ消え去ってしまった。
コスト面や職人の不足、建築基準法などが主な要因であろうが、そもそもは身近に存在していたはずだ。
ここ木曽地方は木曽ヒノキをはじめとする良質な木材が産出される世界でも有数の「木材生産地」である。
もちろん昭和の初めころまでは自分の家の屋根の板を割って、屋根に乗せ、風雨をしのいできた。
実際、今でも民家の修理などで瓦やトタンをめくると下から「へぎ板」が出てくる。
会社見学に来る年輩の方からは「まだやっとんたんか?俺も昔は自分の家の屋根板を割っとったわ」なんて声をよく聞く。
ユネスコ世界無形文化遺産登録!、選定保存技術、世界に認められた技、日本の誇る数少ない職人集団…などなど、
聞こえの良い言葉ばかりが耳に入るたび、違和感を感じる。
浮かれてはいけない。我々は絶滅危惧種なのだ。
今回の登録により伝統的な技術に再び注目が集まることは大変ありがたい事。
ただ、これを機に、もう一度自分の置かれている立場を見つめ直し、真摯に「技」や「自然」に向き合わなければならないと思う。
「当たり前の技術」
ニュースにもならないくらい普通の仕事になっていく事。これが私の最終的なゴールだと思う。

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