高木 諒
もう自分は頑張るしかありませんから
INTERVIEW
職人インタビュー
随分、回り道もしました
―― 高木さんは、長野県のご出身だそうですね。
はい、長野県辰野町の出身です。高校では「生物工学」というものを学んでいました。
小さい頃から動物が好きで、将来は獣医になりたいと思っていたんです。
―― 今の仕事とは大きく違う分野にいらしたんですね。
そうなんです。その後に東京の音楽学校に行ったり、色々なアルバイトを経験したりもしました。今から思えば、「オレはやりたいことをやりたい!でも何をやりたいんだ?」とモヤモヤしていた時期だったと思います。
警備員のアルバイトをしていた時には、同じ職場にいる人生の先輩から色々なアドバイスをもらったりもしました(笑)。
―― 茅葺き(かやぶき)屋根の仕事もされたそうですね。
はい、長野県に戻ってきてから携わるようになりました。
10月~4月の冬の間は開田高原で萱を刈って、4月から茅葺きの現場で屋根にのぼっていました。いわゆる「職人」という世界に触れたのはその時でした。
親方の作業する感覚とかを見ていると「スゲー!」と思うことがたくさんありました。自分の中ではこれまでの考え方が大きく変わる契機になりました。ですが色々あって、残念ながら辞めることにしたんです。
―― それで栗山木工にいらしたんですね。
何年も溶接の仕事をしている友人がいるのですが、その友人が溶接にプライドを持って取り組んでいる姿を見て「自分もこうなりたい!」と思ったんです。茅葺き職人のこともあったので、もう一度職人という世界に飛び込もうと。
その時見たのが、栗山木工の動画でした。
作業の景色や板へぎの様子を見て「これだ!」と思いました。理由はわからないのですが、直感的にそう思ったんです。そうしたら居ても立っても居られなくて、次の日には栗山木工に電話したんです。
正直、だいぶ遠回りもして、色々な方に迷惑もかけてきました(笑)。
板へぎの様子を見て「これだ!」と思いました。
どうやったら早くできるか、毎日考えています
―― 実際に板へぎをしてみていかがでしたか?
実際にやってみて、動画で見たのと同じでした。大きな違和感はありませんでした。
ただ、おじさんや先輩の方々の仕事はとっても早いし上手で、自分とは全然レベルが違いました。
それでも「やってやるぞ!」という気持ちをもってただひたすらに取り組みました。
会社の人にやり方を教えていただいて、ずっと自分を追い込んで頑張りました。社長も「ここはこうした方がいい」とたくさん教えてくれました。
ちょっとでもできるようになるとうれしくて、それを励みにしてまた頑張るの繰り返しです。本当にただただ頑張りました。もう自分は頑張るしかありませんから(笑)。
―― 今、毎日の作業はどのような感じですか?
どうやったら早くできるか、毎日それを考えながら取り組んでいます。
このぐらいの量ならこのぐらいの時間でできるかな?と思って始めるのですが、なかなか予定通りには終わらないことが多いです。やっぱり、まだまだ自分は木のことを知らないのだと思います。木によって、一つ一つ全部感触が違いますから…。
そんな中でも、最近やっと「おっ!」という瞬間があるんです。上手くいく感触というんでしょうか、最初よりも少しずつ上達しているのだと思います。
―― ご自身の板が屋根になっているのを見たことはありますか?
出来上がった屋根ではなく、職人の方が屋根を葺いているところを見に行きました。自分の板はうまく納まってくれているか、とか、屋根葺き職人さんにとっては扱いやすい板になっていたか…と、そんなことばかりが気になりました。
屋根葺きを見て、早く仕上げながらもしっかりと納まる板を作ろうと、改めて思っています。
どうやったら早くできるか、毎日それを考えながら取り組んでいます
動画でもご覧いただけます
ぜひ体験してみてほしい
―― 今年、お子さんもお生まれになったそうですね。
はい、お父さんになりました。子どものためにも、ますます頑張ろうと思っています。
妻も仕事のことを応援してくれているので、それも大きな励みです。
―― 今、目標とされていることはありますか?
いい板を作りたいという思いはもちろんありますが、目標というものは特にはありません。今の気持ちとこのスタンスで、明日もあさっても続けていきたいです。
先輩に追いつけ追い越せの気持ちで毎日取り組んでいこうと思います。
―― 最後に、ご覧になっている方にお伝えしたいことはありますか?
色々と回り道をしてきましたが、今のこの仕事に出会えてよかったと思っています。
だって世界中を探してもこんな仕事ないじゃないですか(笑)。
「やってみたいな」と思えば、むいているむいていないに関わらずできると思います。自分自身もこの仕事がむいているかはわかりませんし…。
ですから「やりたいな」と思ったらぜひここに来て体験してみてほしいです。
―― とても素敵なお話、ありがとうございました。
ありがとうございました。
この仕事に出会えてよかったと思っていま す