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栗山雄二

この仕事は
ずくがなきゃダメだなぁ

INTERVIEW

職人インタビュー

ここでどう木取りするかで、現場でどこに使うのかが変わってくる

―― 今されているのは何という作業ですか?

これは「木取り」という作業だね。この三角のものを、一定の厚みの板にする、そうすると今度は次の行程で「板へぎ」って言って一枚一枚へいで(割って)いくことになる。

この左手の定規で厚みを測って割って。この定規は自分で作ってね。

―― 計ると言っても難しそうですね…

なるべく「柾目」(まさめ)って言って、目が縦に入るようにしていくんです。ものによっては「板目」(いため)と言って割りにくいものもあって、そういうのは屋根でも下の方とか表に出ないところに使われてね。瓦葺きの下用とかね。普通のこけら板は柾目にやらないとえらいことになる。

木を見ながら、柾目に割ったり板目に割ったりね。木によって使い道が違ってね。だからここでどう木取りするかで、最後の屋根葺き現場でどこに使うのかが変わってくるってことだね。

でも、木を見ていい木を買ってきても、うまく割れない木は割れないなぁ。(笑)

―― 節があるものはどうするのですか?

節は割れないから、節は外して割るしかないんだな。節のある部分はダメなんで、それを避けながら、できるだけ上手に木を取っていくことになるかな。節を避けても、節の周りは木が曲がるから、それはへぐ(割る)時に、どっちにそれかを考えながらへぐことになるな。

木の目(年輪)を見ると、この年は寒かったとか、この年は暖かかったとかわかるんだよ。例えば、木を切って倒すと、隣りの木の日当たりが良くなって、そうするとその木の目も変わってくるんだな。

 

ここでどう木取りするかで、現場でどこに使うのかが変わってくる

ここでどう木取りするかで、現場でどこに使うのかが変わってくる

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この仕事は、ずくがなきゃダメだなぁ

―― 雄二さんはいつ頃からこの仕事をされていらっしゃるんですか?

46年前からやっているかな。うちは親父が代々やっていたからね。
当時は、こけらは他の職人さんもおったし、「こうやってやれぇ」って言われてやって。間違えると怒られるけど。(笑) 「あと、やっとけ」って言われてね。まぁ、やり方だけは教えてくれたかな。

当時はこけらばかりじゃなくて、製材とこれと両方やっていたね。

―― 長く続けてこられた秘訣はありますか?

この仕事はずくがなきゃダメだなぁ。こうやって座っているのもずくがいるよ。

 

※「ずく」は長野県の方言で、「惜しまず働く力」のこと

 

あとは、手足を気を付けないといけないな。私も大きなケガはしたことはないけど、「やばい」と思ったことはあるわな。(笑) 

包丁はもう持ったままにしておかんと、その辺に置いたたままで木を持ったり取ったりすると、知らないうちに刃に当たってケガしちゃうからね。そして置く時は刃を自分の方に向けないで置いておかないとね。でも向こうに向けてずっと置いておくと、今度は向こう側に人が通って危ないから今度はそれを注意しないと。

―― 力も必要なのでは?

力まかせにやると、すぐにくたびれるね。あまり力を入れないでやらないとね。

一定の厚みに木を割っていく「木取り」

一定の厚みに木を割っていく「木取り」

屋根の上ばかり見ていて、下を全然見ないんだよ

―― 作られた板が、金閣寺や国宝などに屋根になるのはどのような気持ちですか?

いいね、やっぱり。あそこで使われるっていうのは。

実際に行って見れば、ああ、ここで使っているんだってね。ただ、会社の人と見に行っても、皆、屋根の上ばかり見ていて、普通の人が見ている下の方を全然見ないんだよ。(笑)

―― 素敵なお話、ありがとうございました。

ありがとうございました。

 

この仕事はずくがなきゃタメだなぁ

この仕事はずくがなきゃダメだなぁ

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