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   栗山弘忠 (栗山木工、代表取締役)

仕事をすることは、
自分の人生に付加価値をつけていくこと

INTERVIEW

職人インタビュー

「板へぎ」の技術を残していくために

―― 栗山木工では以前から若い職人さんがいらしたのですか?

 

私が会社に入った頃は年配の職人さんばかりで、その中で若いのは自分だけでした。ちょうど私がここに入る頃に、これまでこけら板と一般住宅の製材の両方をやる形から、こけら板だけを専門にする仕事へと大きく方向転換しました。当時は会社の転換期というのもあって、私も仕事を覚えるのに精一杯。とにかくガムシャラにやりました。親父と2人で夜や休みの日に残ってやったりもしました。

 

その後、おやじから引き継いで自分が会社を見るようになってから、この技術をこれからも残していくために若い人にも積極的に来てもらいたと思うようになりました。

 

―― それはどうしてですか?

 

年配の職人さんが定年を迎え退職されていく中で、代わりに自分が仕事を覚えて来ましたので、現場としては何とか回るんです。でも、次第に将来を考えるようになりました。ありがたいことに、こけら板の注文も次第に増えてくるようになってきて、今度は仕事をこなせなくなる可能性が出てきたんです。だから若い人に来てもらわないといけないと。

 

ただ、自分もやってきて感じるのは、この板へぎという仕事、全体がわかるようになるには10年ぐらいかかるんです。ですから、今60才を超えているおやじ達が現役バリバリの時に若い人が一緒になって働けるような、そういう期間をできるだけ多く持ちたいと思っています。

 

―― 若い方が働く環境作りも大変だったのでは?

 

伝統だからこの技を残さないといけない…という掛け声だけではだめで、会社としても若い人を受け入れられる体制を整えました。この仕事は一生ものの仕事ですから、会社に入ってきた若い人が長期にわたって安心して働いてもらえる環境が必要です。それは環境や待遇面もそうですし、経営の面でもそうです。今は、どんな人が来ても対応できるようにはしてあります。

先人たちが残してくれたこの「板へぎ」という技術は大きな財産

先人たちが残してくれたこの「板へぎ」という技術は大きな財産

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仕事をすることは、自分の人生に付加価値をつけていくこと

―― 若い職人の方にはどんなことを期待されていますか?

 

僕は「仕事をすることは自分の人生に付加価値をつけていくこと」だと思っています。ですから仕事は大変ですけど、常に上を目指してもらいたい。仕事を通じて、自分の人生が豊かになってもらえたらいいですね。若い人を見ていて、この頃そう思います。仕事ができるようになっていくって、自分の価値を高めることですしね。

 

そして最終的には、それぞれが社会に何かを還元してもらいたいと思います。もちろん会社としても地域のために何かできることはないか…と思っています。
今までこの地域に育ててもらっているので、それぞれがこの地域に恩返しをしてもらいたいなぁ…って。もちろんお世話になった人や、ご両親にも。

 

この板へぎという仕事は、それだけの価値がある仕事だと思います。

 

別に仕事に価値の高い低いがあるということではなくて、この仕事は木という生き物と向き合い続けて、そして最後は木のスペシャリストになっているわけじゃないですか。そこまで育ててもらった感謝も一緒に、次の世代につないでもらいたい、という…。

 

うちの若い職人が「この仕事に出会えて感謝しています」って言ってくれたんですけど、「そのぐらい凄い仕事に出会えたと思うなら、その感動を次の誰かに伝えないとダメだよ」って伝えました。

 

―― 一生ものの仕事ですね…

 

この板へぎという仕事は、一生かかってもわからない仕事です。仕入れた木がこけら板に向くのか、向かないのかは、結局やってみないとわからない。ただ、適材を仕入れられる確率が上がっていくだけだし、いいものを選ぶ目がだんだん養われていくだけで、結局最後までわからずに終わっていくんです。最後は何本の木に触ったのかという経験です。

 

だから若い人には「今のうちに年配の職人さんから吸収できるものは何でも吸収しておけ」って話しています。生き字引のような年配の職人さんが目の前にいて、こんなラッキーなことってないじゃないですか。例えば、若い人が力だけでやろうとするところを、年配の職人さんはやりやすいように1枚1枚、やり方を変えていたりするんです。そういう細かいところも注意してよく見てもらいたいですね。

「この仕事は、それだけの価値がある仕事だと思う」

「この仕事は、それだけの価値がある仕事だと思う」

常に自分で考えて進めてほしい

―― 自分で積極的に学んでいく気持ちが大切ですね。

 

自分で考えられないとダメかもしれませんね。

特にうちの仕事はマニュアル化できないですから。それぞれがそれぞれの感覚を持っていて、それで最高の逸品が出来てくるんです。教えてあげられるのも、よりベターな方法でしかないんです。しかも各々の持っている感覚が違いますから…。

 

今日、こうやって失敗したら、どうして失敗したのか考えて、次はこうやってみようって常に考えてやり方を変えていく。逆に、今日うまくできても、次の日はまた違う木ですから、うまくいかなかったりするんです。木に合わせて変えていかないといけないですから。そうやってどんどん自分で考えて進めていってほしいと思います。

 

―― 最後にメッセージお願いします。

 

先人たちが残してくれたこの「板へぎ」という技術は大きな財産です。この技術を次の100年、そしてまた次の100年へつないでいくことが我々の使命だと思っています。我こそは!と思う方がいらっしゃれば、一度見学にいらしてみてください。

この技を通して、それぞれが社会に恩返しをしてもらいたい

この技を通して、それぞれが社会に恩返しをしてもらいたい

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