職人という選択肢
今月の上旬、大学生が主催するイベントに参加しました。
学生と社会人、会社が交流しながら「仕事」や「地域」について考えるものでしたが、その中で何人かの学生と話す機会がありました。
とある男子学生との会話。彼は公務員を目指しています。
私:「あなたは民間企業ではなく、なんで公務員を希望しているの?」
学生:「社会のために、人のために役立つ仕事がしたいから」
私:「なるほど。じゃあ、私達みたいな企業は社会のために役立つことはしていないの?」
学生「うーん。………。」
黙ってしまいました。私は公務員を志望することを否定しているわけではありません。
しっかりと目的をもって進んでいる彼は、素晴らしいと思います。
ただ、彼の言った「社会のために、人のために」という言葉が今でも頭から離れません。
私が問いかけた「私たちは社会のために役立っているのか?」
この問いかけを自分自身にしています。
日本には多くの会社、そして数えきれないほどのサービスが存在します。
競争の中で淘汰はあるにしろ、世の中に「必要」だと思われているものが残っていく仕組み。
翻って私たちのような「職人」と呼ばれる仕事や「伝統技術」と言われるもの。
後継者不足や販売不振などネガティブな話題を耳にしますが、各地域で古くから伝えられてきた「技」は、地域の資源や文化を背負う重要な位置にいたはずです。
それが社会の価値観の変容や生産性を追求する流れの中で、いつの間にか隅っこの方へ追いやれてしまっているような気がします。
私達がしなければならないこと。
自分たちの仕事を多くの方々に知ってもらうこと。
そしてその「技」が伝えられてきた意義をしっかりと理解してもらうこと。
仕事を考えるうえで、「職人」という選択肢が当たりまえに語られる社会になること。
これが私の願い。
そしてこれから就職を迎える世代には、「何をやりたいか」つまり「目的」や「意義」によって選択をしてもらいたい。
結果としてそれが、公務員であったり、会社員であったり、願わくば「職人」であったり…
そんな社会になることをひそかに願っている。